離婚後の親権。有利なこと不利なことを教えて!
離婚したとしても絶対に親権は取りたい!とお考えの方は多いことでしょう。
親権は、子どもの利益が最重要として考えられるため、子どもが乳児であるなど幼いほど、母性を優先とし母親が有利になりやすいと言われています。
令和3年度の司法統計のデータによると、離婚調停(や審判)で親権者を決定したうち母親が親権者となったものが90%を超えており、過去10年間のデータにおいてもほぼ同等の割合となっています。
このコラムでは、離婚調停などで親権を争う際に注意したい「有利なこと」「不利なこと」についてお話したいと思います。
contents outline
親権とは
親権とは、子どもの利益を守るために、未成年者の子どもを養育・監護するとともに、その財産を管理し、代理人として法律行為をする権利や義務のことです。
婚姻中においては、親権を父親と母親が共同で行使している状態となります。
財産管理権
子どもの財産を代わりに管理したり、子どもの代理人として法律行為を行うことができます。
・包括的な財産の管理権
・子どもの法律行為に対する同意権
身上監護権(監護権)
よく聞く「監護権」ですが、親権の中の一つので、子どもと共に生活し、日常の世話や教育を行う権利のことを言います。
・身分行為の代理権
・居所指定権
・懲戒権
・職業許可権
※親権と監護権の違い
親権の中に監護権は含まれているため、基本的には親権者が監護権を有することになります。
親権者が子どもと共に生活できない事情がある場合や、親権者でない親が監護権者として適任である場合には、親権者と監護権者が別々になることもありえます。
離婚の種類と親権
婚姻中は、親権を父親母親の共同で行使している状態ですが、離婚するとなると、これをいずれかに定めなくてはなりません。
離婚届には親権者を記入する欄があり、子どもが未成年の場合は記入しなければ、離婚届自体が受理されないのです。
※離婚後の「共同親権」について導入が議論されておりますが、2022現在、導入時期などはまだ未定となっています。
協議離婚
お互いの話し合いによる離婚です。親権者に関しても話し合いで決めます。
※折り合いがつかない場合、調停での話し合いとなります。
※離婚についてのみ合意を成立し、親権・監護権者の指定については不成立として調停を申し立てることもできます。
調停離婚
調停委員などの第三者を介し話し合う調停によって、離婚に関して合意する方法です。
※ここでも折り合いがつかない場合は、裁判となることもあります。
裁判離婚
家庭裁判所に離婚訴訟を提起し、最終的に裁判官により離婚の可否や親権者を決定する方法です。
審判離婚
レアなケースになりますが、離婚調停において、些細なことで折り合いがつかず調停が不成立となりそうな場合に、裁判官が職権で決定を下し成立させる離婚のことです。
※審判に対し、異議申し立てすることもできます。
親権者の指定に関して、「協議」「調停」は、お互いの合意を目指すものであるのに対し、「裁判」は、たとえ望まない結果であっても、裁判官の下した判決に従うことになる点が大きく違います。
また、一度親権者を指定した後に、事情が変わり(虐待が判明したなど)親権者を変更したい場合には、「親権者変更調停」を申し立てることが可能です。
親権・監護権者になるために有利な事とは
親権をめぐって、父親と母親が一歩も譲らなければ、調停や審判、最終的に裁判にまで進みます。
裁判で最終的な判決が出てしまえば、従わざるを得ないため、充分な準備をして臨みたいところです。
裁判所では、どんな部分を「親権者にふさわしい」と判断するのかをふまえ、親権・監護権者になるために有利なことを探っていきましょう。
- 重要な大前提
- 「子どもの利益、子どもの福祉」の根拠となる、客観的事実が重視される
子どもへの愛情
調停や裁判では、子どもへの愛情=今までどのくらい子どもと一緒にいる生活をしてきたかで判断します。子どもとの結びつきが強い方が有利となります。
育児日記や写真、SNSなどに残っていると、客観的な資料になりえます。
これまでの監護の実績
これまでの生活で、子どものために「食事」「掃除・洗濯」「お風呂・身支度」「学習」などの監護をした実績が多いほうが有利になります。
これからの監護の見通し
今後においても、これまで同様に子どもの監護が可能であるかも大切なポイントです。
「今までは家に居られたが、離婚後は働くため子どもとの時間が減りそう」などの事情があるときには、代わりに子どもの面倒を見てくれる祖父母などの存在をアピールするとよいでしょう。
心身の健康状態
子どもの監護が難しいほどの、重い病気や精神疾患がないことも重要です。
監護に問題のない程度であればそれほど問題にはなりません。また、祖父母などサポートが得られる環境であれば考慮されるため、アピールするのを忘れないでください。
生活環境の持続性
転校やきょうだいとの別れなど、子どもの生活環境が大きく変わらないように配慮されます。離婚時に別居している場合は、その時子どもと一緒にいる側が有利になります。
子どもの年齢や発育状況
子どもが、乳児などまだ幼いうちは母親側に有利となります。
子ども本人の意思
子ども本人の意思が尊重されます。
特に、15歳以上の子どもの場合には、裁判所が子ども本人の意思を聞く必要があるため、かなり重要になってきます。(おおむね10歳以上であれば子どもの意思が確認されるようです。)
経済状況
収入の安定性があるほうが有利とはいえですが、無職だとしても公的扶助や、養育費や財産分与を受られるようであれば問題はありません。
このような項目について、父親側と母親側のいずれのもとで生活をすることが、子どもの幸せにつながるかを基準に判断されることになります。
子どもの意思が重要視されるからといって、子どもに発言の内容を強要したり相手方の悪口を言ったりするのは、子どもを悩ませる行為と捉えられ、裏目に出てしまうこともありますので注意してください。
親権・監護権者になるために不利な事とは
では、逆に親権・監護権者となるのに不利な状況とはどんなものになるでしょうか。
普段、浮気調査のご依頼を多くいただくわたくしどもですが、不倫が判明したとしても必ずしも親権者として不適格だと判断されたり、不利になるという事はありません。
相手側が以下のような状況であれば、ご自身にとっては有利であると言えるでしょう。
監護能力が不十分な場合
● 虐待やネグレクトをしている
● 精神状態は不安定で寝床から起き上がれない
● 子どもを置いて家出しそのまま別居している
● 育児を相手方に任せきりにしていた
「子どもの利益」を第一に考え、子どもをしっかりと監護する能力がない場合は適任ではないと判断されることになります。
不倫であっても「子どもを置いて家出し、不倫相手のところに行った」など、子どもの監護が疎かになっている場合には、監護能力がないと判断される要因となります。
生活環境が大きく変わる場合
● 離婚時に別居していて、子どもと離れている
● 離婚後実家に戻るため、子どもは転校が必要
子どもの負担を少なくするため、「今まで主に監護を行っていた親が、これまで通り監護する」ことが優先されます。
「転校の必要がある」など、離婚後の子どもの生活環境が大きく変わるような問題がある場合は不利に働くことがあります。
これまでの監護実績は変えることはできませんが、「今後は、祖父母と同居しサポートしてもらえる環境になる」「転職して、これからは定時に帰られるようになる」など改善予定の部分があればアピールしていくことも大切です。
「親権を相手に渡したくない」という気持ちでいっぱいになってしまいがちですが、子どもにとっての利益を考え、環境を整えるなどの努力も大切になってきます。
そのほか不利に働くポイント
● 離婚後の、相手方と子どもとの面会交流を拒否している
離婚後の面会交流に否定的な場合、子どもの「どちらの親にも会いたい」という気持ちを尊重できないと捉えられ、マイナスポイントとなります。
● 相手側がいないうちに、子どもを連れ去り別居している
離婚時に別居をしている状態では、その時に子どもと一緒にいる側が有利となるため、有利性を手に入れたいなどの理由で、つい相手に無断で子どもを自分の元に連れてきてしまうことがあります。
合意のない連れ去りは不利となる点と、国際結婚のご家庭においては、連れ去り行為=犯罪とされている国もあるので、慎重に行動することをおすすめいたします。
● 離婚裁判において、子どもに不利益となる理由で有責となっている
離婚の原因が、DVやネグレクトなど子どもに不利益なものであると圧倒的に不利となります。しかし、離婚の原因について有責となっている場合でも、子どもの監護に影響がないものであれば問題はありません。
まとめ
離婚自体には同意していても、親権・監護権に関してなかなか決着がつがず、泥沼化することも多々あるようです。
なんとか親権を勝ち取ろうと「相手の不利な点を探したい」と考えてしまうこともおありかと思います。
特に、別居されていて相手方の行動が分からない場合にはその傾向が強いようで
- 育児もせずに不貞相手に会っているところを撮影してほしい
- 経済状況、虐待などないか、暮らしぶりを撮影してほしい
- 不倫相手への慰謝料請求をしないことを交渉材料にしたいため証拠が欲しい
などといったご依頼をいただくこともございました。
婚姻関係を継続できない状況の相手方を、信用するのは難しいという心境も理解できます。
わたくしどもにできることは多くはありませんが、いただいたご相談には精一杯対応させていただきたいと思います。
※2022年4月1日より、民法上の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
このため、親権は子供が18歳になるまでのものとなります。
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